訪問リハビリは医療保険で利用できる?条件や注意点について解説
公開日:2025.04.01 更新日:2025.04.02
文:rana(理学療法士)
訪問リハビリといえば、介護認定を受けている高齢者が、通院が困難な場合に利用するイメージを持つ方が多いと思います。しかし、なかには介護認定を受けていない若い人でも、通院が困難なケースもあるでしょう。では、介護認定を受けていない医療保険の被保険者でも、訪問リハビリのサービスを受けることは可能なのでしょうか。
今回は訪問リハビリの概要や、医療保険が使えるのかどうか、利用する際の条件について現役理学療法士が解説していきます。
おすすめ特集
訪問リハビリとは
訪問リハビリは、病院や診療所、介護老人保健施設の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が利用者の自宅を訪問し、リハビリを提供するサービスです。また、利用者の家族へのアドバイスや相談なども行います。
病院や施設への通院が困難な場合、退院後の日常生活に不安がある場合など、主治医から必要性があると判断された方はサービスを受けることが可能です。訪問リハビリは実際の生活環境に添った機能訓練ができることや、利用者本人が自宅でリラックスして行えることがメリットといえるでしょう。
訪問リハビリのサービス内容
訪問リハビリで実施する主なサービスは以下の通りです。
● 日常生活動作の訓練
● 家族へのアドバイスや相談
● 生活環境の改善に関するアドバイス
● 福祉用具の選定
具体的には関節可動域訓練や筋力訓練、歩行や起き上がりなどの動作訓練、自主トレーニング指導、日常生活動作訓練、嚥下訓練、褥瘡(床ずれ)解消のためのマッサージなどが行われます。
訪問リハビリは医療保険で受けられる?
訪問リハビリは介護を受けている高齢者だけが利用するサービスではありません。そのため、医療保険の被保険者でも訪問リハビリを受けることが可能です。実際に筆者も、介護保険の被保険者ではない、小児や50代の方への訪問リハビリに携わった経験があります。
訪問リハビリは、医療保険と介護保険のどちらでも利用可能ですが、適用される要件に違いがありますので、理解しておくことが大切です。
訪問リハビリの対象者
訪問リハビリの対象は以下の通りです。
① 要介護1以上(要支援1以上)
※要支援(1~2)の方は「介護予防訪問リハビリテーション」の対象となります
② 主治医から「訪問リハビリテーションが必要」と認められている方
40〜64歳の方は、以下の特定疾患により介護認定がされると、介護保険で訪問リハビリテーションのサービスを受けられます。
特定疾病の範囲
● 関節リウマチ
● 筋萎縮性側索硬化症
● 後縦靱帯骨化症
● 骨折を伴う骨粗鬆症
● 初老期における認知症
● 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
【パーキンソン病関連疾患】
● 脊柱管狭窄症
● 早老症
● 多系統萎縮症
● 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
● 脳血管疾患
● 閉塞性動脈硬化症
● 慢性閉塞性肺疾患
● 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
上記に当てはまらない40〜64歳の方や、40歳未満の方は、主治医から「訪問リハビリテーションが必要」と認められれば、医療保険で訪問リハビリテーションを受けられます。
訪問リハビリを受けるための条件
訪問リハビリを受けるためには以下のような手順を踏む必要があります。
② 主治医に診療情報提供書やリハビリテーション指示書などの必要な書類を依頼
③ 訪問リハビリを実施する事業所と契約を結ぶ
④ 事業所の医師が主治医の指示書をもとに利用者に合ったリハビリテーション計画書を作成
⑤ リハビリ開始
介護保険で訪問リハビリを利用する場合は、主治医に訪問リハビリを利用したい旨を伝え、リハビリテーション指示書を3ヵ月に1度発行してもらわなければなりません。
医療保険で利用する場合は、1ヵ月に1回、リハビリテーション指示書の発行が必要です。
訪問リハビリは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が作成するリハビリテーション実施計画書に基づいて実施されます。また、このリハビリテーション実施計画書は、実施したリハビリの効果や評価を踏まえ、医師の医学的判断に基づいた定期的な見直しが必要です。
訪問看護のリハビリと訪問リハビリの違い
訪問リハビリとは別に、訪問看護ステーションが提供している「訪問看護リハビリ」も存在します。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が自宅に訪問してリハビリを行う点は同じですが、以下のような違いがあります。
訪問リハビリ | 訪問看護のリハビリ | |
---|---|---|
運営 事業所 |
病院・診療所 老人保健施設など |
訪問看護ステーション |
概要 |
●病院や診療所のリハビリ専門職がサービスを提供 ●病院や診療所のリハビリ専門職がサービスを提供 ●原則、介護保険が優先されるが、必要性があれば医療保険でも利用可能 |
● 訪問看護ステーションの看護師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がサービスを提供 ● 医療的管理が必要な方が対象 ● 医療保険・介護保険のどちらでも利用可能 |
訪問リハビリに携わるなら役割を理解しよう
高齢化が進むなか、訪問リハビリの需要が高まっており、今後の訪問リハビリで活躍する理学療法士は増えていくことでしょう。これから訪問リハビリに携わりたいと考えている方は、概要や役割についてしっかり押さえて就職や転職に備えておくようにしましょう。
>>【全国どこでも電話・メール・WEB相談OK】セラピストの無料転職サポートに申し込む
参考

rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
他の記事も読む
- 高齢者の前のめり歩行の問題点と原因は?リハビリ職としての対処法も解説
- 内反尖足とは?原因や日常生活への影響、対処方法について解説
- 6分間歩行テストとは?目的や実施方法、注意点について解説
- セラピストの基本!歩行周期における立脚相の役割を確認しよう
- オーバープロネーションとは?原因や予防・対策について解説
- 理学療法と整体師の違いとは?理学療法士に似た職種も紹介
- 10年後「言語聴覚士」はなくなる?将来の需要や課題について考える
- 関節モビライゼーションとは?効果ややり方を解説
- トレンデレンブルグ歩行とは?原因や問題点、解決方法について解説
- ボバース法とは?特徴やメリット、批判的な意見について解説
- 改めて知りたい!関節可動域訓練の目的や種類、注意点を解説
- ゴニオメーターの正しい測定方法とは?よくある悩みと解決策を徹底解説
- リハビリ専門職の給料って?平均年収や給料アップの方法を解説
- リハビリの150日ルールとは?制度の詳細や150日を超えた場合の対応を解説
- ストレッチポールでやってはいけないこと|理学療法士が解説
- 手根管症候群でやってはいけないことは?リハビリでの生活指導について解説
- 【仕事が辛い】言語聴覚士が病む原因とは?病む前に知っておきたい対処法も
- むち打ち症でやってはけないことは?むち打ち症の種類や治療法も紹介
- 福祉住環境コーディネーターの資格は役に立たない?セラピストにとってのメリットを解説
- 福祉住環境コーディネーターの仕事内容や年収は?資格取得をおすすめする人も解説